ベトナムビジネス入門

第2回 ベトナムビジネスでパートナーは必要か

ベトナムで何かビジネスを始めたい、ベトナムとの関係で何か投資をしたいという場合に、まず心配されることの一つは、ベトナムに信頼できるパートナーを見つけることができるかという点ではないでしょうか。ベトナムのことがよくわからない、色々調べたけれどもどうもわからないことが多いし、自分がしようと思っているプロジェクトや事業はベトナムの企業と一緒にやった方がが安心ではないか、などと悩むことが多いのではないでしょうか。実際、私もたくさんの会社や事業者の方々からそのようなご質問やご心配の声を伺ってきました。どういう場合にどういうパートナーが本当に必要なのか、どういう場合にはパートナーは不要なのかということです。

ベトナムはドイモイ(刷新)という旗印の下、純粋な社会主義政策を止めて、市場主義経済を導入する路線を進めてきました。ドイモイとは1986年のベトナム共産党第6回党大会で提起されたスローガンであり、それまでの配給制経済を改め、資本主義経済の導入、国際社会への協調を柱として市場経済の発展を目指してきました。WTOを始めとして、最近ではCPTTPに至る多国間合意、二国間合意を通じて、外国企業によるベトナムの市場への参入を幅広く容認してきました。現在までに、外国企業のベトナム市場への参入は一部の制限・条件設定を除いて、幅広く認められるようになりました。かつては、ベトナムの企業と合弁の上で会社を設立しなければならない場合が多かったのですが、今ではそうしたことが求められる事業分野はほとんどなくなっています。すくなくとも法律上、制度上は、市場開放という観点では、ほとんどの分野で、外国企業が単独で、自らの資本のみにより事業形成をすることが可能になっています。ベトナムの市場や産業の状況などの情報についても様々な媒体や機関が提供をしていますので、皆さんが参入されたい産業分野、市場についてそれほどの手間をかけずに検討することも可能になってきています。また、自社の事業と同じ業種のベトナムの会社と組むことは、確かに短期的には水先案内人としてとても役に立つことですが、中長期的にはお互いの利益が相反して、自社独自の製品やサービスの展開を優先することに気が向くようになることがよくあります。ベトナム側としては日本の会社から色々と技術やノウハウを学んで自社の発展に活用したかったと、でも学ぶことがなくなったり、お互いのやりたいことに違いが生じてくるともう一緒にやる必要がなくなったり、日本側の製品やブランドを支援することが脅威になるのではないかと感じる。逆に日本側としても、ベトナムのことをだんだん理解することができるようになり、ベトナム市場での展開の仕方についてもベトナム側に依存するよりも自前で展開したほうが容易く、効果的にできるのではないかと考える。そのように事業を一体となって続けることができなくなったと合弁の例をたくさん見てきました。ですので、何がなんでも、ベトナムの会社と合弁をしなければベトナムで事業をすることはできないのではないかと考える必要はなく、むしろ、可能な限り、自社独自のビジネス形成を進める形での検討をすることが良いのではないかと考えます。

一方で、外国企業であるかベトナム企業であるかを問わず、ベトナムで事業を行う以上、誰もが従わなければならない、誰もそれを理解した上で実行しなければならない様々な課題や障害も存在しています。そうした課題や障害を乗り越えるためには、ベトナム側に適切なパートナーを見つけて、効果的に連携していくことも大変重要です。

電力開発等の資源開発、住宅や商業施設、ホテル開発等の不動産開発などインフラ開発系のプロジェクトが挙げられます。国や地方行政が構築する公的計画に準じる必要がありますし、公的計画に基づいた開発権の授与に関しては、国や地方の行政機関の幅広い裁量が認められています。こうした開発系のプロジェクトに関しては、様々な経験や関係性を有しているベトナムの企業が幅を利かせていますし、実際の開発に関しても様々なノウハウを持っていることが多いです。国や地方の公的計画や裁量の枠内に入るようにプロジェクトを構成する必要があります。また不可避的に土地開発としての性質を帯びるため、土地利用計画などの基準や目的にも適合するように調整する必要があります。こうした調整についてのノウハウや経験を有しているベトナム事業者と一緒に組むことにより、開発権の取得がより容易になったり、日本企業としてはなかなか理解しにくい法制度上の仕組みや規制上の差配や調整、手続の実施がよりスムーズにいくことが多くあります。ですので、こうした開発系のプロジェクトをされる場合には、それぞれの分野で経験や実績のあるベトナムの事業者と合弁を組まれることが良い場合が多くあると言えます。もっとも、自らが主体となって、もしくは自ら単体でこうした開発プロジェクトを行うことは可能です。この場合は、国の制度や手続、裁量権に関して良く理解することが大切です。

ベトナムの市場への商品流通・販売については、ベトナムで製造した自社製品の販売や卸売については原則外資系規制がなくなっています。小売業に関する外資系規制(二号店以降について経済性テストを求め、それぞれの店舗に許認可を必要とする)はまだ残っているので多少の困難はありますが、外資独自での進出は可能です。こちらについても、自ら販売スタッフや代理店などを通じた販売網を構築することにより、可能な限り自らの力で事業展開することは可能です。もっとも、ベトナム事業者によって大型スーパーマーケットチェーンが展開されておいたり、各地方に商品の流通・販売促進ネットワークを持っている流通企業も存在していたりしますので、そうしたベトナムの流通事業者と連携することも考えられます。

農業、水産業等、ベトナムの第一次産業との連携を図った事業展開を検討されている企業も最近増えています。農業については、農業を目的とする土地使用権を外国企業が保有することが原則できないことや、農民や農業協同組合(合作社)などの権利関係が複雑であるため、実際に農業ビジネスをするためには様々な関係者との連携や契約が必要となります。水産業については、漁業権者との関係を確保できるという観点から、水産業者や水産加工会社等の地元企業との連携が必要となるでしょう。

また、事業上のパートナーを見つけるべきかどうかという問題に加えて、必要に応じてアドバイスや専門的な支援をしてくれる会社を見つけることも大切だと思います。例えば、先に述べた開発系のプロジェクトについては、日本側だけで単独で事業を進めることも可能だと言いました。確かにそうですが、実際的には、専門的なコンサルタント会社に委託をされることにより、多くの問題がスムーズに進むことが多いです。分野によっても異なりますが、それぞれの分野に秀でた専門コンサルタント会社があります。また、ベトナムの事業者と一緒にされる場合でもすべてが適法に行われているかをチェックする法律専門家をアサインされることも重要です。

そして、ベトナムと文化や社会を知ること、そして信頼できるベトナム人の友人をできるだけ持つことが大切だと思います。よく言われるのは、ベトナムと日本は文化的にもよく似ているといわれます。もともと漢字文化圏でしたし、お箸を使い、お米を主食としています。その他に似ているところを挙げればたくさんあります。そしてそういう似ている部分が日本人がベトナムを進出先として選びやすくさせる大きな理由や動機になっています。けれども、色々見てみると、ベトナム人と日本人には様々な点で違いがあるということが分かります。ルールや社会的枠組みに対する考え方、法律や約束に対する姿勢に大きな違いがあります。法律やルールは守るためのものでは必ずしもなく、活用・利用するためのものだという考え方。臨機応変に融通を利かせる生き方を良しとする点などで違いがあります。ベトナムの文化や社会にすこしでも入り込んで、根付いていくことで見えてくることがたくさんあります。日本的な考え方は多くの場合、彼らが学ぶべき対象であるかもしれませんが、場合によっては日本においてのみ通用する特異な考え方として捉えられることがあります。ベトナム人の信頼できる友人を見つけることは簡単ではありませんし、試行錯誤の連続でもあります。それでも共通な理解を求めて努力するという終わりない道を歩むことが必要となるように思います。

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