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2023年9月 活動報告

▼ 2023年 9月 活動報告 -理事長 森正暁 -

例年にも増して続いた今年の酷暑もようやく弱まりつつ、涼やかな秋の到来を待ち望む日々となりました。

さて、ここ数年来、外国人の技能実習生、特にベトナム人実習生の問題が社会問題としてクローズアップされています。

技能実習制度は、2009年7月15日、「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律」が公布され、2010年7月1日から、新しい外国人技能実習制度が施行されました。新しい制度では、活動を行うことができる在留資格「技能実習」が新たに創設されました。

しかしながら、制度の理解不足や悪用など多くの問題が発生し、大きな社会問題になっています。このため、政府は制度の根本的な改正をめざし、取り組みを開始しています。

あらためて現状の問題点を確認し、一日も早く制度を改正し、ベトナム人実習生が日本で安心して働くことができるよう願っています。

制度の問題点

〇実習実施者による問題
近年では、研修生の急増に比例するように、人権蹂躙や事件が多発している。
典型的な事例は、パスポート取り上げ、強制貯金、研修生の時間外労働、権利主張に対する強制帰国、非実務研修の未実施、保証金・違約金による身柄拘束、強制帰国を脅し文句に使って性行為を迫るような性暴力などで、2006年には、トヨタ自動車の下請け企業23社での最低賃金法違反、また岐阜県内の複数の縫製工場では、時給300円で残業させていたことなどが報道された。但し、来日前の契約で研修生本人が進んでこの金額での労働に同意していた事実も数多く存在する。
さらに、日立製作所とグループ会社10社の計11社12事業で、技能実習適正化法違反があるとして、外国人技能実習機構が改善勧告した。2018年4月~9月に実地検査をしたところ、必須業務と異なる作業を行わせたケースや給与が最低賃金を下回るケースがあった。
2022年には、岡山市内の建設会社で勤務していたベトナム人の技能実習生が、2年間にわたり職場で暴行を受けていたことが明らかになり、古川禎久法務大臣は、外国人技能実習機構に、当該の建設会社や監理団体に対し改善を講じるよう勧告した。当該の建設会社は、同年2月18日に出入国在留管理庁から、今後5年間の技能実習生の新規受け入れ停止の処分を受けた。
福岡県内の高齢者福祉施設で勤務していた26歳のフィリピン人の技能実習生の女性が、自身が妊娠した際に、出産休暇を取得してフィリピンに帰国し出産した後、日本に戻って実習を継続したいとの旨を伝えたが、監理団体の理事らは「契約違反なので、罰金を支払い、フィリピンに戻らなければならない」などと説明し、同意書に署名を迫った。女性は2022年8月に退職したが、不当に退職を迫られたなどとして、当該の福祉施設の運営法人と管理団体とを相手取り、福岡地方裁判所行橋支部に計約620万円の損害賠償などを求め提訴した。
厚生労働省は、2019年度の監督指導を行った9,455事業所の内、796事業所に労働基準関係法令違反を確認し、6年連続で過去最多を記録した(法定労働時間超過2,035事業所、労働安全衛生法違反1,977件、時間外労働の割増賃金不払い1,538事業所、複数法令違反事業所を含む)。悪質な法令違反として労働基準監督署が送検したのは34件、法令違反として労基署に実習生が申告し是正を求められたケース107件。

法務省によると、2018年に「不正行為」を通知した機関は112機関で、企業単独型による受け入れ1機関、団体監理型による受入れ111機関、不正行為の合計件数は171件。賃金の不払いが82件と最も多く、次いで,隠蔽する目的での偽変造文書等を行使又は提出が38件、保証金の徴収等16件であった。

〇制度の趣旨と実態の乖離
制度の趣旨と実態の乖離も指摘されている。いわゆる3K職種など日本人労働者を確保できない、そして外国製品との価格競争にさらされている中小企業が、本来の目的である国際貢献ではなく、低賃金の労働力確保のために本制度を利用するケースが目立ち、研修生の中にも技能修得ではなく「出稼ぎ」として来日する者がいる。
送り出し国の中国では、裁縫業など安い労働力を武器にした労働集約型産業が限界を迎え、工場がカンボジアなどアジアの国々へ次々と移転し、工場用地の賃貸や誘致の紹介業などを行う経営者も現れるなど、技能実習生として来日する必要性が薄まっている。
送り出し国のバングラデシュにある縫製工場では、2012年頃からドイツ製の機械を導入し手作業を減らし、2017年には従業員がたまに機械を掃除し、デザインのプログラムを入力するだけで海外向け商品を生産できるようにするなどロボット化が進んでいる。また、実態としては、技能実習生が低賃金労働力として機能していた面もあるが、途上国の賃金上昇と円安に加え、途上国間の人材獲得競争やファクトリーオートメーションにより、実習先として日本を選ぶ意義は薄れつつある。

〇転職制限
技能実習生は、受け入れの決まった企業で就労することが原則であり、同じ仕事内容であっても、他の会社に転職することが出来ない。実習生が送り出し機関に多額の借金をしているケースの場合、賃金未払いや暴力など問題が起きても会社を移ることは難しいため、人権侵害が横行している。また、過酷な職場に耐えかね、失踪した実習生が、借金返済のため不法就労をする事例が多発している。

〇監理団体の問題
技能実習生の監理団体が、送り出し機関と違法なマージンの取引が横行している。過剰接待等も行われており、その費用は技能実習生が送り出し機関に支払う費用に転嫁されている。

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