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2022年12月 活動報告

▼ 2022年 12月 活動報告 -理事長 森正暁 -

今年も残すところ1か月足らずとなりました。
会員各位のご協力により、昨年に続き、コロナ禍においても、出来うる限りの活動ができましたことに、心より御礼を申し上げます。来年も、会員各位のご健勝とご活躍をお祈り申し上げますとともに、引き続き当センターへのご協力をお願い申し上げます。

 今年のベトナムは、コロナの影響を受けながらも順調に経済発展を続けております。そうしたベトナムの経済状況について、現地メディア「Viet Nam News」が報じた内容の一部をお伝えいたします。


ベトナムのGDP成長率予想は7.6%、今年1~9月は11年ぶり高水準へ

英銀行大手のHSBCホールディングスが11月中旬にハノイで開催した「マーケットアウトルック2022」において、出席したエコノミストは、「ベトナムの現在の成功は運ではない」と断言し、「早期かつ周到な準備が成功の要因である一方、多くの問題を改善する必要性もある」と指摘した。

HSBCのCEOであるティム・エバンス氏は、「世界的課題に直面したにもかかわらず、ベトナムは非常に勢いがあり、GDP成長率の点で多くの地域を上回っている」と述べた。HSBCは、2022年のベトナムのGDP成長率予測を7.6%に引き上げた。また、2022年第3四半期ベトナムのGDPは、ベトナム経済がコロナ禍によって深刻な影響を受けた前年の同時期と比較して13.67%増加した。広範な景気回復により内需が回復し、製造業と輸出は轟音を上げ続けている。その結果、今年1~9月の成長率は8.83%と、11年ぶりの高水準を記録した。

エバンス氏によると、9月上旬にMoody’s(スタンダード&プアーズ (S&P)と並ぶ2大格付け会社の一つ)がベトナムをBa2に格上げした。S&Pによる格上げに続き、ベトナムは現在、投資適格より1ノッチだけ低い水準となった。フィッチ(ニューヨークとロンドンに本拠を置く民間格付け会社)は、2018年5月にベトナムをBBに格上げし、現在、ベトナムのBB格はポジティブな見通しとなっている。

2030年までに予想されるベトナムの姿

低中所得のベトナムは、2045年までに高所得に到達し、先進国になることを目標としている。現状、アッパーミドルクラスは2030年までに平均17%成長すると予想されており、さらにベトナムは、2030年までにドイツやイギリスよりも大きい「世界第10位の消費市場になる」とエコノミストの間で言われている。また、製造業の景況感を示すPMIは、9月に52.5を記録した。この数値は前月と比較して低下はしたものの、ASEAN全体の改善傾向を受け、ベトナムの製造業の状況も大きく改善し、製造業部門の健全性が向上していることは間違いない。

「楽観主義ではないか」との声も

しかし、同セミナーでは、ユーロチャムの会長でジャーディン・マセソン・ベトナムの国別会長であるアラン・キャニー氏が、参加者に対して「ベトナムの経済と投資環境は依然として懸念点もある」と語った。2021年の世界経済が1976年以来最速の5.5%成長を遂げたことで、グローバル市場も賑わいを見せているが、その結果、「しばらく見られなかった楽観主義が再び生まれている」とキャニー氏は述べた。また、ロシアのウクライナでの軍事侵攻を受け、戦争と混乱が欧州の玄関口に持ち込まれ、世界経済は深刻な打撃を受けたことにも言及した。その結果、エネルギー価格の高騰が世界市場に波及し、商品価格の上昇やサプライチェーンの混乱が生じ、消費財や繊維製品、電子部品などがますます高価になり、調達が困難になっている点を指摘し、「ベトナムのような製造業を中心とする発展途上国は、こうした圧力の影響を特に受けやすく、紛争が長引けば長引くほどこうした影響は強まり、加速していくだろう」とキャニー氏は述べた。
さらには、一部地域では解禁されているものの、いまパンデミックに対する厳しい規制がされている中国の現状についても、ベトナムが直面しているさらなる課題であることを強調した。ベトナム産業貿易省によると、繊維、衣料、履物産業で使用されるベトナムの原材料と付属品の約55%は、中国から輸入されている。中国が「ゼロコロナ」を追求し、その結果として物流や供給のボトルネックを引き起こし続ける限り、ベトナムは電子部品、機械部品、生地、化学品などの必須生産物の入手が困難であることに変わりはないと考えられる。これは、ベトナムの輸出成長を脅かすものである。
そして、世界的な労働力不足は、成長をさらに制限すると思われる。国際労働機関(ILO)は、2022年に世界で約5,200万人のフルタイム雇用が失われることに相当する労働時間の不足を予測しており、ベトナムにおいても急速な経済成長を維持するために必要な雇用を確保することに苦心している状況にある。

世界の投資家から見たベトナム

これらの懸念事項は、ベトナムおよび世界中の投資家の信頼を低下させている。2022年第3四半期において、ユーロチャムのベトナム・ビジネス環境指数(BCI)は、ベトナム人投資家たちの投資環境に対する信頼低下を示し、62に低下した。また、国連、世界銀行、IMF、OECDによる国際的な成長予測の下方修正も行われている。
キャニー氏によると、世界銀行は2022年の世界の成長率を2.8%と弱めに予測しているが、ベトナムは7.2%の成長が見込まれるという。これは、ベトナムの若くダイナミックで、テクノロジーにますます精通した5,600万人の労働力が牽引しており、比率でも絶対数でも世界最大の労働力の1つとなっているのである。ベトナムの高品質で安価な労働力を考慮すれば、外国人投資家がベトナムに製造業の拠点を移したいと考えるのは当然のことだ。その結果、輸出志向の製造業とインバウンドの外国直接投資が、ベトナムの経済成長を牽引している。現在、ベトナムの輸出はGDPの19%を占め、2010年の1%未満から増加した。実際、同国の輸出市場は現在、マレーシアやタイを上回っている。

米国と欧州のインフレ、そして中国の高齢化…

一方、HSBC アジア経済調査部チーフエコノミストのフレデリック・ノイマン氏は、「世界経済を覆う『暗雲』は、米国と欧州のインフレである」と述べている。 「FRBによる強力な利上げを伴い、ドル相場も押し上げられ、未だ冷え込む気配はない。また、ベトナムの経済活動に大きな影響を与える要因として、中国が挙げられる。経済の減速、労働市場の低迷、個人消費の減少、そして人口問題が同国で発生している」 と述べた。ノイマン氏は、「国連人口基金の最新データによると、中国の人口増加はピークを迎えた後、減少に転じるだろう」と述べた。一方、インドの人口増加は来年初めから中国を上回り、最も人口の多い経済大国になるという。中国では高齢化が急速に進み、労働年齢人口が減少している。このことは、労働力人口の減少が賃金、労働者、産業を圧迫するため、ベトナムにも影響を及ぼしている。それに伴い、企業はベトナムを含む東南アジア諸国へ移転している。結果、ベトナムは労働力の優位性を生かした企業誘致の機会を得ることができる強い立場にある。 ノイマン氏は、「ベトナムの成長率は引き続き堅調で、来年のGDP予測は6%となり、世界で最もGDPが速く成長する国の一つである」と述べた。

(この項は「幻冬舎Gold Online」の一部を引用いたしました)

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