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2024年6月・7月 活動報告

▼ 2024年 6月・7月 活動報告 -理事長 森正暁 -

 今年は、各地の梅雨入りが例年より遅れていますが、雨量の多さと暑さが心配されています。会員各位のご健勝を祈っております。
 当センター事務局長の加療・入院のため、5月~6月の一時期に当センターの活動をやむを得ず停止いたしましたが、現在はほぼ従来通りの活動を行っています。会員各位に対し、ご不便おかけしましたことを心よりお詫び申し上げます。

さて、ベトナム経済の状況は、コロナの感染状況も落ち着く中、GDP成長率など回復基調が見られます。
以下、ニッセイ基礎研究所の斉藤 誠准主任研究員の最新レポートをご紹介いたします。


2024年1-3月期の実質GDP成長率は前年同期比5.66%増1(前期:同6.72%増)と低下したが、市場予想2(同6.40%増)を下回る結果となった(図表1)。
1-3月期の実質GDPを供給項目別に見ると、主に鉱工業・建設業とサービス業の減速が成長率低下に繋がった(図表1)。

 鉱工業・建設業は同6.28%増となり、前期の同7.35%増から鈍化した。まず主力の製造業は同6.98%増(前期:同7.97%増)と鈍化した。また鉱業が同5.84%減(前期:同4.20%減)と、国内原油・ガス田の老朽化に伴う減産により低迷したほか、建設業が同6.83%増(前期:同9.32%増)と鈍化した。  
一方、電気・ガス業が同11.97%増(前期:同7.76%増)と猛暑の影響で二桁成長だった。

 GDPの4割強を占めるサービス業は同6.12%増となり、前期の同7.29%増から鈍化した。サービス業の内訳を見ると、運輸・倉庫業(同10.58%増)が二桁成長となり、また宿泊・飲食業(同8.34%増)や卸売・小売業(同6.94%増)、専門・科学技術サービス(同6.00%増)が順調に増加した。一方、不動産業(同1.70%増)、保健・社会サービス(同4.05%増)、情報・通信業(同4.14%増)、教育(同4.15%増)、党関連活動(同5.05%増)、金融業(同5.20%増)は相対的に緩やかな伸びにとどまった。
 農林水産業は前年同期比2.98%増(前期:同4.13%増)と鈍化した。

図表1) 3月29日、ベトナム統計総局(GSO)が2024年1-3月期の国内総生産(GDP)を公表した。
図表2) Bloomberg調査

1-3月期GDPの評価と先行きのポイント
ベトナム経済は、2023年は欧米市場向けを中心とした輸出の落ち込みにより成長ペースが鈍化して通年の成長率が同+5.1%となり、コロナ禍からの経済活動の再開により好調だった2022年の同8.0%から低下した。四半期ベースで見ると、2023年1-3月期の同+3.41%を底に成長率が上向いて10-12月期には同+6.72%まで加速したが、今回発表された2024年1-3月期の成長率は同+5.66%となり、4四半期ぶりに減速した。

 1-3月期は、鉱工業・建設業とサービス業がそれぞれ鈍化したことが成長率低下に繋がった。まずサービス業(同+6.12%)は堅調に推移したものの、前期の同7.29%から鈍化した。昨年の外国人旅行者のビザ要件緩和や滞在可能期間の延長などの措置も功を奏してインバウンド需要が回復(1-3月期のベトナムの外国人観光客は同+72%の464万人、図表2)、付加価値税の減税延長が消費マインドを刺激しており、運輸・倉庫や宿泊・飲食、卸売・小売が全体を牽引した。一方、不動産(同+1.70%)は回復に時間がかかり、依然低水準だった。

 また、製造業(同+6.98%)は景気が、急減速した前年同期から回復が進んだものの、前期の同7.97%から鈍化した。もっとも1~3月の輸出(同+17.2%)は電子部品やスマートフォンの出荷が米国向けを中心に回復しており(図表3)、貿易依存度の高いベトナムの製造業は回復局面にあるようだ。
 建設業(同+6.83%)は不動産市場の低迷により民間事業が停滞している一方、高速道路整備などの公共事業を加速が下支えとなり順調に拡大した。

 先行きの輸出と製造業の見通しは明るく、ベトナム経済は海外直接投資の拡大、景気刺激策の継続なども追い風となり堅調な成長が続きそうだ。政府の通年の成長率目標である6.0%~6.5%も十分に達成可能だろう。しかし、消費の勢いが鈍化しつつある点は懸念される。サービス業は+6%台の成長を維持しているが、8四半期ぶりの低水準だった。足元の消費者物価上昇率は+4%近くまで上昇しており家計の実質所得が目減りしたことが影響したとみられる(図表4)。2023年はベトナム中銀が景気を刺激するため政策金利を累計1.5%ポイント引き下げたが、今後の景気回復局面でインフレ率が政府目標の4.5%以内を突破すると、年後半にかけて金融引き締めに転じる可能性もあるだろう。

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転載 (2024年04月02日「経済・金融フラッシュ」)

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